現在COVID-19ワクチンとして主に使用されているmRNAワクチンのブースター接種によって,デルタ株,オミクロン株に対する中和抗体が増加するなどの効果を示す多くの報告がなされているにもかかわらず,ブースター接種によってオミクロン株による感染爆発を防ぐことはできていない.
 ワクチンの2回目の接種割合及び3回目のブースター接種割合の高いイスラエルと,イスラエルと国境を接する4か国,パレスチナ,ヨルダン,レバノン,エジプトでのオミクロン株による2022年の100万人あたりの1日の感染者数,死亡者数を比較すると,イスラエルでの感染者数,死亡者数が突出して多くなっている.
 同様に,米国,イギリス,日本,韓国でのオミクロン株の流行状況とワクチンブースター接種割合を比較すると,ブースター接種割合が高い韓国で感染者数,死亡者数の急増が起きている.同じくブースター接種割合が高いイギリスでは,2月に一度ピークアウトした後,3月に入ると再度感染者数,死亡者数が増えているなどの現象が見られる.
 発表されている論文,Our World in Data等の統計データ,日本の厚生労働省データを検討すると,mRNAワクチンの2回までの接種は,65歳以上の高齢者に対しては感染,重症化,死亡の抑制効果が見られるが,65歳未満の若年層,特に10歳以下の子供へのワクチン接種に対してはベネフィットよりも副反応のリスクの方が高い可能性がある.mRNAワクチンの接種,特に3回以上のブースター接種にどの程度の感染抑制効果や重症化抑制効果があるのか,厳格な検証が必要である.

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※本稿は臨床評価誌(Vol.50, No.1, 2022)に掲載されています。臨床評価誌はこちらよりご覧いただけます。